「遊んでいるだけじゃないんです」 〜専門職の “あそび” の意味〜
- ことまる
- 3月24日
- 読了時間: 3分
更新日:3月25日
「遊んでいるだけに見える」その裏で
「ただ遊んでるだけじゃないの?」 そんなふうに思ったこと、ありませんか?
先日、運動が得意でまだ発語がない3歳のお子さんが、運動特化型の療育施設をやめてしまいました。理由は、お父さんが見学した時「遊んでるだけに見えたから」。
でも、実はその“遊び”の中に、たくさんの発語を育てるヒントが詰まっていたのです。

作業療法士の先生は、体の動きや感覚を通じて、ことばを引き出すアプローチをしていました。
たとえば、バランスをとる、力加減を調整する、手足や口の動きを協調させること……。これらは、ことばを発するための「土台」になる力です。
そして実は、ことばは 体を動かしながら出やすいのです。
たとえば、手を挙げながら「おー!」と声を出したり、何かを引っ張りながら「よいしょ」と言ったり。体とことばが結びついて、動きの中で自然に言葉が出てくる場面がたくさんあります。
おそらく、お父さんが思い描いていた“発語の練習”は、もっと机に向かって勉強のようにするものだったのでしょう。
遊びの中で、ことばを育てる
ことばの教室では、小さい部屋で行うことが多いです。
ミニカー遊びをしたり、チラシのフルーツやデザートを切り貼りしたり、動作を伴いながら「おいしそうだね〜」「どれが好きかな?」といった 相手とのやり取りを大切にしています。
発語を引き出すのに必要なのは、言葉を交わしたいという“気持ち”と“場面”。勉強のように見える環境では、それが生まれにくいこともあります。
ことまるでは、未就学のお子さんに人気の「まこちゃん」の教材も、遊びの中で発語や助詞の表現を促すのに大活躍です。
・発語を目的とするときは「まこちゃんに“あーん”してあげよう!」とか
・助詞の表現を目的とするときは 「バナナを食べるよ~」
そんな声かけの中で、「あーん」「を」といった言葉が自然と出てきます。
まこちゃんの口がパクっと開いて“食べてくれる”のも、子どもたちにとっては嬉しいご褒美になています。

“観察”という目に見えない仕事
さらに、レッスンの最後にゲームを取り入れることがあります。
ただの遊びに見えますが、私たち言語聴覚士は、
・指先の使い方
・順番を守れるか
・共同作業ができるか
・どんな表現をするか
・勝ち負けへのこだわり
など、じつに多くのことを観察しています。
「遊んでいるだけ」に見えても、その中で子どもの性格やこだわり、素の姿が一番よく見えるのです。

“できた”は、日常の中でこそ
レッスンで発語が出るようになっても、それだけでは「できた」ではありません。
ご家庭や園での遊びの中で自然にことばが出てくること。それが“できた”の本当の意味です。
このことを私たちは「汎化(はんか)」と呼びます。
遊びの中で一緒に過ごすことで、その様子を確認しているのです。
最後に
子どもは遊びの中で育ちます。
ことばも、学びも、コミュニケーションも、すべて遊びが土台になっています。
だからこそ、療法士は「遊び」を大切にしています。
そして、それを丁寧に保護者の方に伝えることも私たちの大切な役目です。
「遊んでるだけじゃないんですね」と言ってもらえる日が来ると、私たちも嬉しく思います。
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